
地方の終活!? 地方を「看取る」ことが日本を「守る」
2020.3.4
2019.2.1
どちらか、取材に行ってくれないかしら??
じゃあ、キタじいにお願いするしかないわ。
自分、行きたいっス〜!
カッパ澤の女好きには困ったもんじゃ。
しかし、「日本の伝統と生態系を守るために活動している20代女子」とは面白そうな若者じゃわい。
この記事の目次
あ!こんにちは!今回取材して頂ける方ですよね!?
君が橋本さんかい。今日はよろしく頼むよ。
それにしても、ここは凄い街並みじゃの!
この辺は「土佐備長炭」が有名で、昔ながらの蔵が立ち並んでいるんですよ。
蔵が並ぶ道を抜けると、私の家がありますので案内しますね!
室戸は商人の街なんじゃな。「木材を切り出して大阪に持っていき、たいそう儲けた」とさっき観光案内に書いてあったわい。
着きました。こちらが私の家です!
どうぞ中へ入ってください。
早速、色々と聞いていきたいんじゃが・・・・。
まず、初めに橋本さんが住んでいる室戸がどんな場所なのか教えてくれるかの?
室戸は海も山も近いのが特徴です!
家がある場所は吉良川(きらがわ)地区と言って海が近い場所になっています。
また、私が地域おこし協力隊として活動している日南(ひなた)地区は山が近い場所になっていますね。
自宅の2Fからは海が見えるほどの近さ
海も山も近いというのは贅沢じゃのう!食べ物もよりどりみどりじゃな!
そうなんですよ〜。山の猟師さんにイノシシの半身をドンと頂いたり、海の漁師さんにブリを一匹ドンと頂いたり・・・。
食べ物が美味しいのは幸せですねぇ〜。
イノシシ半身・ブリ一匹とはスケールがケタ違いじゃの・・・・。
協力隊として活動をしている日南(ひなた)地区というのはどういう場所なんじゃ?
日南は古き良き日本の里山が残る、人口70名ほどの集落です。
家からは車で10分ほどの所にあります!
人口70人!?すぐに知り合いになってしまいそうじゃの!
そうですね。もう協力隊になってから2年以上経つので、ほとんどの人と顔見知りです。
顔を出すと「野菜持ってきな〜」なんて言ってもらったりして笑
すっかり溶け込んでおるのぉ〜!
日南ではどんな野菜を作っておるんじゃ?
お墓に供える「しきび」
お米も作っていますし、ゆず・里芋・らっきょう・サトウキビなんかも作ってますね。
少し変わったところだと、お墓に供える「しきび」という草や、「ぼたナス」という甘みのあるナスも育てていますね!
こんなに海と山が近い環境というのも珍しいの。
ところで、今は日南地区で地域おこし協力隊として活動をしてるということじゃが、具体的にはどんな活動をしているんじゃ?
日南(ひなた)地区の活性化とPRをしています。
廃校になった小学校を活用して特産品の販売や、カフェを出店するイベントをやったり・・・。
この間はゆず狩りのイベントをやりました!
ゆずは秋の味覚じゃのう!!楽しそうじゃ!
これは、絞り機でゆずを絞っている様子じゃな??
そうですね。
搾りたてのゆず果汁をお土産として持って帰ってもらいました!
10名の方が参加してくれたのですが、日南の美味しいゆずを味わってもらえて、魅力が伝えられたかなと思います。
70名の集落に10名のお客さんが呼べれば、大きなインパクトになるの!
因みに、イベントが無いときはどんな仕事をしているんじゃ?
基本的には市役所に通って、行政同士の打ち合わせやイベントの企画書やチラシの作成など事務仕事をしたりしています。
地域に出て農作業などを手伝うこともありますよ。
橋本さんが活動している日南地区
なるほどのう。
地方で生活したい!という若者が気になると思うんじゃが、働く時間やお休みはどうなってるんじゃ?
勤務時間は朝8時半から17時15分までです。
週に29時間働くことになっているので、週休3日という感じですね。
週に3日休みとは、けっこう休みが多いんじゃな。
そうですね!
でも、仕事とプライベートの境目ってあんまり無くて、休みの日も地域に出て何かしらやってることが多いですね。
なんと!それは忙しいのう。地方に来た若者が地域の仕事で消耗してしまう・・・。というような話を聞く事もあるが、そんな事は無いかい?
私はそんな事無いですね!農作業の手伝いが好きですし、「この大根は○○さんが作った」とか「この魚は××さんが釣った」とか生産者の顔が分かる生活って最高に楽しいです。自分が関われたら尚更ですね。それに、協力隊の仕事は自分がやりたいイベントを提案できたり、困った時には相談にのってくれたりと、かなり自由にやらせてもらっています。そういった意味では、どんな自治体に所属するのかは大切かも知れないですね!
少し話は変わるが。さっき、この家を宿泊施設にすると言っておったのう。
なかなか面白そうな内装が気になっておったんじゃ・・・・。
色々とDIYで進めているので、ご案内しますね!
まずこの家なのですが、廊下を挟んで左右に部屋がある縦長な建物になります。突き当りがお手洗いとお風呂になりますね。
本当じゃ。外から見た時には想像できないほど縦長な建物じゃな!
築50年ほどの古民家なんです。神棚とか床の間とか、昔ながらの作りが残ってますよ!
懐かしい雰囲気の家じゃのう〜。
ん!あれは何じゃ!??
これは、ふすま黒板です!友人に協力してもらって、ふすまに特殊な塗料を塗りました。
黒板のようにチョークで書けるようになっているんですよ!近くのおすすめスポットを書いたり出来るかな〜と思って。
これはグッドアイデアじゃ!ワクワクする内装じゃのう。
ありがとうございます。
あっ!そうだ。ぜひお風呂も見てください!自分で壁を塗ったんです。
おぉ〜!壁の漆喰塗りもやったんじゃな。
・・・ん。これは何か模様になっているの。
そうなんです〜!
真っ平らに塗るのは技術が必要なので、あえて波をイメージして跡をつけました。
なるほどのぅ。これは良い味になっとるわい!
橋本さんは色々と工夫するのが上手いの。
ありがとうございます。友人の力を借りながらですけどね!
いやいや、DIYをバリバリこなす女子はカッコいいのう。
ところで、この家は宿泊施設にすると聞いたが、どんな宿泊施設にするんじゃ?
私の中では「ゲストハウス」っていう名前はピンと来なくて・・・。
ただ宿泊するだけでなく、暮らしの体験が出来る宿泊施設をオープン予定です!
最近は火鉢がお気に入りとのこと
若いのにパワフルじゃのう!
どういった体験が出来る施設になるんじゃ?
里山の散策ツアーや農業体験・サイクリング・炭窯見学などなど。室戸での暮らしを体験出来るようなコンテンツを考えています。
観光のような短期滞在から2週間くらいの長期滞在も出来るようにしたいですね。
なるほどのぅ。室戸での暮らしがお手軽に体験出来るというワケじゃな。
体験やオーナーとの交流がセットになっているというのは非常に魅力的な宿泊施設じゃ。
そうですね!
日本の伝統的暮らしを体験したい人とか、地域に入って暮らしてみたいという人に来てもらいたいです。
普段触れられないような暮らしを提供したいですね!
コンセプトまでしっかり決まっておるんじゃな。
でも、どうしてそんな宿泊施設にしようと思ったんじゃ?
一番の転機となったのはタイでアジアゾウの保護ボランティアをしたことです。日本の生活とは全く違っていて・・・。
竹の入れ物で調理をしたり、ハンターと夜の森に入ったりする非日常の暮らしから得るものは多かったですね。
タイでゾウの保護!?貴重な経験じゃの!!
その体験が、いま進めている体験型宿泊施設の元となったんじゃな!
そうですね!
ボランティアではゾウのことだけでなく、周辺の生態系についても学びました。
ゾウを守るためにはゾウだけでなく、環境全体を保全しないとダメなんですよね。
これが原体験になりました。
タイで泊まりがけボランティアをした経験から、自分でも泊まりながら体験できる場を作ろうと思ったんじゃな。
しかし、若くして動き出しているというのが素晴らしいの。
ありがとうございます。
子供の頃から生き物が好きだったこと、大学でエコツーリズムを学んでいたこと、タイでのボランティア経験など、1つ1つの点が1本の線に繋がったのが、室戸での体験型宿泊施設なんです!
なるほどのう。
でも、体験型宿泊施設をオープンする場所としてなんで室戸を選んだんじゃ?
初めは色々な場所を見て回る予定でした。
でも、一番初めに室戸を見学して一目惚れしちゃったんですね笑
室戸は、吉良川地区のように海に近い場所もありますし、日南地区のように山に近い場所もあります。それに、古き良き里山の暮らしが残っている場所なんですよ。
里山の暮らしというと、なんとなく田舎暮らしのイメージはつくが・・・。
橋本さんが言う「里山の暮らし」というのは、具体的にどんな暮らしの事なんじゃ?
ため池・水田・あぜ道・採草地・生垣・屋敷林・竹林・薪炭林(二次林)・鎮守(ちんじゅ)の森・奥山(水源林)といった環境が残る、伝統的な生態系と共に生きる暮らしです。
日本人は縄文時代の後期、我々の祖先が稲作を始めた頃から里山と共に生きてきました。
なるほどのう。
そう考えると、縄文時代の後期からほんの数十年前まで、大部分の日本人は里山での暮らしをしとったわけじゃな。
でも、なんで「里山の暮らしが残っている場所」に住むことにしたんじゃ?
日本の里山を保全するためですね!
様々な環境がモザイク状に存在する生態系が里山なんです。
そういった環境が残っているからこそ、多様な生物が生きていくことができるんですよ。
なるほどのう。里山を守ることで日本の伝統的な風景だけでなく生き物も守ることになるという訳じゃな。
正にそうですね!里山の環境が移り変わり、循環することを「遷移」と言います。
種が飛んできて、植物が育ち、草原になり、小さな木から大きな木が生え・・・。といった具合です。里山はこの「遷移」を人間の手によって途中で止めています。人間の手が入らないと「極相(きょくそう)」という生き物が住みづらい状態になってしまうんですね。
なので里山の保全が必要なんです。
昔の日本人が里山を守ってきたから、日本の生物ひいては日本人のアイデンティティーも守られてきたんじゃな。
そうです。
人の手が入ることで里山は守られ、人々は里山から米・野菜・山菜・川魚などの恩恵を受けて生活する・・・という相互補助的な関係だったのです。
ふむふむ。
なので、宿泊施設に滞在しながら里山の暮らしに触れてもらうことで、日本の伝統的な暮らしについて伝えたい。と。そういうワケじゃな?
実はそれだけじゃないんです!
例えば、室戸で里山保全の体験をした人が私の活動に共感してくれて、日本のどこか別の地域で里山保全をしてくれたら・・・。
日本の伝統的な自然・生物・文化を守る活動が日本全国に広がっていくわけじゃな!?
正に、橋本さんがゾウの保護ボランティアをして、里山保全の活動を始めたのと同じ流れを作っていくということになるの!
そうそう!そういう風になっていったら嬉しいですね〜!
室戸発で日本全体の里山や伝統を守っていく・・・・。
なんて壮大な計画なんじゃ!この宿泊施設がその拠点となっていくんじゃな!
橋本さんは確かな進む道があって、それに向かって進んでいるようじゃが、今後はどんな暮らしを作っていきたいと考えているかの?
私は今の暮らしがすごく好きで。地元の物を食べて、地元の祭りに参加して・・・・。すごく充実しているんですよね。
なので、室戸の事をもっと知ろうと思って、最近はよく散策をしています。
この間は歩きながら冬苺やムカゴを摘んできて食べたりしました。
室戸の伝統的なお祭り 世の中は知らないことだらけ より
なるほどのう。
里山での暮らしを自ら体現しているワケじゃな。
橋本さんは、今後もずっと室戸にいるつもりかのう?
はい!今のところはそう考えています。
2019年の3月に地域おこし協力隊の任期が終わって、そこから宿泊施設がオープンします!
なので、まずはそれに向かって突っ走ります!
おお!それは忙しくなるのう。
日本の伝統的な自然や文化を守るために奮闘する若者がおって、日本の未来も安泰じゃ!
今日は色々と教えてくれてありがとう。
いえいえ。
こちらこそ、ありがとうございました!
今回、橋本さんを取材させて頂き、自分の本音に対してダイレクトな方だなと感じた。
幼い頃から生き物が好きだったという自分の感情を大切にしながら、大学でも生物や環境について学び、ゾウの保護ボランティアを経て、新卒で協力隊として田舎暮らしに入っていく・・・・。
そんな彼女の話を聞いていると、常に自分自身と対話し、思い描くゴール向かって一歩一歩確実に進んでいるように思える。
しかし、理想の暮らしというのは永遠に実現される事のないもので、常に追い求めていくものなのかも知れない。
その時に重要なのが、橋本さんのように常に自分の心の中の声に耳を傾け、理想に向かって選択を重ねていく事だ。
若者が自分の理想を追い求めていく中で、もっともっと元気な地方が増えていく。
今回の取材でそんなサイクルが増えていく予感を感じた。
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