インタビュー

2018.11.27

23歳単身で標高650mの限界集落へ移住!3年でのべ2500人の若者を集める謎の人物に突撃してきた


キタじい

なんじゃ?この険しい山は!!年寄りをこんなに歩かせおって・・・。本当にこんな山奥に人が住んどるんか。

矢野さん

あー!キタじいですか!?どうもどうもいらっしゃい!僕の暮らしの取材をしてくれる方ですよね!?

インタビューした方のプロフィール

矢野 大地(@123Vaal)

1992年京都府生まれ。高知大学に進学し小学校より志していた教師を目指すも、教育実習後に教師の道に疑問を持つ。大学3年時に1年間休学し宮城県気仙沼市で震災支援のボランティアへ。大学4年時にはプロブロガーのイケダハヤト氏に頼み込み初代アシスタントとなる。大学卒業後、標高700mの古民家だいちハウスにて滞在者を受け入れを開始。2016年6月にNPOを立ち上げて、限界集落でイノシシ猟や大工にも取り組む。


キタじい

おお!君が矢野くんか。今日はよろしく頼むよ。

矢野さん

どうぞ!なんでも聞いてください!

この記事の目次

山奥の限界集落にすむ26歳

キタじい

しかし、君はすごい場所に住んどるねぇ。どんな暮らしをしているのか簡単に紹介してくれるかのう?

矢野さん

はーい!ここは四国のほぼ真ん中。高知県の嶺北地方という場所です。その中でも僕は本山町の北山という集落に住んでいます。

この家はだいたい標高650mくらいの場所にありますね。電気・ガスはありますが水道はありませんので近くの沢から引いてきています!

キタじい

・・・そなた見るところ独り身じゃろう。26歳の若者が1人で住んでいる環境とは思えんの。

自宅で飼っているニワトリの卵

矢野さん

独り身なのは放っておいてくださいw あと、お風呂とストーブは薪でやってますね。ニワトリを飼いながら暮らしております。

キタじい

なんと!仙人みたいな生活じゃの。良くある田舎暮らししたい系か!

矢野さん

いやいや。それだけじゃないですよ笑 あとはこの山奥の古民家に悩める若者を受け入れるという活動もしていますね。

NPO法人ひとまき
矢野さんが代表を務めるNPO。

「何度でも生き方を選ぼう!」というスローガンのもと、高知の嶺北地方で古民家を改修した拠点(現在は4軒)で活動中。

キャリアに悩む若者向けに自己理解プログラムを提供し、キャリアを自己決定する支援を行っている。

 

キタじい

んん?なんじゃその活動は?ますます謎な若者じゃの。これは楽しみじゃ。詳しく聞かせてもらおうかの。

転機となった東日本大震災

キタじい

始めに聞きたいんじゃが、なんでこんな山奥に住み始めたのかについて教えてもらえるかの。

矢野さん

僕のなかでは「教育」「生産的な暮らし」というのが大きなキーワードです。それを実現しようとした結果、今の暮らしに行き着きました。

キタじい

ほうほう。若いのに随分達観したことを言うのう。どうしてそんな事を考えるようになったんじゃ?

ボランティアでいっていた気仙沼市鹿折地区の様子

矢野さん

キッカケは東日本大震災です。当時、僕は宮城県の気仙沼という地域で1年間のボランティアとして活動をしていました。大学3年生の頃です。

キタじい

なるほどのう。そこでどんなキッカケがあったんじゃ?

矢野さん

当時は震災から1年半が経った時だったのですが、震度5強の大きな余震がありまして・・・。ものすごく怖かったです。

自然って自分ではコントロールできないじゃないですか。周りの人もパニック障害のような症状になってしまう人もいて。

キタじい

それは大変じゃったのう・・・。

矢野さん

それと同時に「いまの生活って一瞬にして壊れてしまう可能性があるんだな」って事を身をもって体感したんです。

キタじい

いくら人に話を聞いたり映像を見たりしても実際に体験した出来事には敵わんからのぅ。それで今までの自分の生き方を見つめ直したと?

矢野さん

そうですね。漠然と現代的な暮らしの限界のようなものを感じました。ただ、当時はどうすれば良いのか?というのは分かりませんでしたね。


ボランティア活動をする矢野さん

キタじい

被災地では具体的にどんな事をしてたんじゃ?

矢野さん

小中高生に勉強を教えていました!

僕、元々は教師になろうと思ってたんですよ。

キタじい

そうじゃったのか!?

矢野さん

幼少期に病弱だった自分に勇気をくれた先生に憧れて。

キタじい

なるほどのぅ。なんでその後は教師にならなかったんじゃ?


教育実習での矢野さん

矢野さん

教育実習まではいきました。でも自分がイメージする「教育」はここには無いなと思って。

というのも、教育って答えを教えることじゃ無いと思うんですよ。でも「正解を押し付けるような仕組み」になってしまっているような気がして。

キタじい

近頃は日本でも価値観や選択肢が多様化してきているからのう。それで、どうなったんじゃ?

プロブロガーのイケダハヤト氏との出会い

矢野さん

1年間の被災地ボランティアを終えて、大学のある高知に帰ってからは、毎日が凄くつまらなく感じてしまって・・・。

ずっと憧れていた教師も何か違う。就職も考えましたが特別やりたい事も無い。当時は苦しかったです。

キタじい

ワシはアメリカに長くおったが日本の若者はキャリア選択の幅が狭いように感じるの。

矢野さん

そうなんです。なので一般的でない、変わった道に進むのはアリかなと思うようになりました。

そんな時に出会ったのがプロブロガーのイケダハヤトさん(@IHayato です。ブログで稼げるようになれば場所にとらわれない生き方も出来るかもしれないというのもあって、雇ってもらえるようにアプローチしてみたんです。


プロブロガーのイケダハヤトさん

キタじい

なんとプロブロガーとな!これは珍しい人物と繋がったもんじゃ!!

矢野さん

そうですね。僕は大学時代からこの嶺北という地域に通っていたのですが、イケダハヤトさんが移住しようとしていたのもこの嶺北地方だったんですよね。

僕もイケハヤさんと同じくらいの時期にこの地域に住み始めてまして、縁があったという感じです。

キタじい

東北での経験

・教師や就職への疑問

・大学時代の取り組み

・イケダさんと縁

そういったものが重なってこの場所に住み始めたということじゃな。


矢野さん

まとめて頂いてありがとうございます笑

オフライン(狩猟)とオンライン(ネット)で仕事をする日常

キタじい

矢野くんがこの場所に住み始めた経緯は分かった。具体的にはどんな生活をしておるんじゃ?


取材の日はあいにくの雨

矢野さん

色々な事をやっているので、一言で説明するのは難しいのですが笑
収入に関してはメディアやオンラインサロンの運営NPOの経営などですね。あとはイノシシやシカの狩猟もやっています。


キタじい

なにやら幅広いの・・・。1つ1つ説明してくれるかのう?


矢野さん

分かりました!先ほど説明しましたが、大学を辞めて1年目はプロブロガーのイケダハヤトさんに雇って頂き、文字起こしや取材などの仕事をやらせて頂きました。

同時並行で自分のブログも書いていており、3年半ぐらい継続して運営してるので、そこから広告収入があります。

また、その際のノウハウなどを活用して企業のメディアの立ち上げ、運営の仕事などもしていますね。



矢野さんが運営する個人ブログ:自由になったサル

キタじい

こんな山奥には似合わん仕事をしてるの。


矢野さん

そうですね笑

でもそれだけじゃなくイノシシやシカを狩る、狩猟も僕のナリワイの1つです!


キタじい

ほう!それは気になるのう。どんな狩猟をしとるんじゃ??


矢野さん

基本的には罠猟ですね。同じ地域に住む師匠に教えてもらいながらやっています。

やっと最近になって自分で仕掛けた罠で獲物を獲れるようになってきました。


矢野さんが仕留めたイノシシの頭蓋骨


キタじい

おお!そりゃすごいのう!これが気仙沼で感じた「生産的な暮らし」と関係してるんじゃな??


矢野さん

まさにその通りですね!自分が食べる「肉」を自給している状態といえると思います。

いまは狩猟メインに落ち着きましたが、こちらに来た当初は畑や米作りなど色々なことにも挑戦しましたよ。


キタじい

狩猟は農業よりも矢野くんが考える「生産的な暮らし」に近かったんか?


矢野さん

どっちの方が近いというわけでは無いんですが、僕は生産的な暮らしを自分の中で留めておくだけでなく他の人に対してもメッセージを伝えたいという思いがありまして、それには狩猟が一番マッチしてる気がするんですよ。


キタじい

なるほどのう。狩猟を通してどんな事を伝えたいんじゃ?


矢野さん

やはり消費に寄り過ぎない持続的な暮らしに関しては伝えていきたいなと思います。

僕自身は東北の震災を通して「いまの文明的生活が明日には崩壊するかもしれない」という事を強烈に感じましたし、人間にとって何も無い状態でも生きる力って凄く大切だと思うんです。


キタじい

それを伝えるのに狩猟が最適じゃと?


仕留めたシカの皮をなめす矢野さん

矢野さん

僕はそう思います。罠にかかったイノシシやシカって毎回自分の手で殺さなきゃいけないんですけど、毎回なんとも言えない複雑な気持ちが湧きおこってくるんです。

動物の命を奪うこと。その肉を頂いて僕が生きること。その感覚を少しでも他の人に伝えたいって気持ちがあるんです。


キタじい

生産的な暮らしを自らが営むだけでなく、そこで感じたことを他人に伝えることで何か考えるキッカケを提供するってワケじゃな。

具体的にはどうやって他の人に届けているんじゃ?


矢野さん

最近はシカやイノシシを使ったジビエアートをはじめました。


キタじい

ジビエアートじゃと!!??


MacBookにシカ(Deer)の皮を張り付けている



矢野さん

こちらは僕が考案した、MacBookに鹿の毛皮のカバーをつけた、MacBookDeerです!


キタじい

これは凄いのう!!


インテリアとして部屋に飾るファブリックパネル

矢野さん

部屋に飾るファブリックパネルに関しては販売もしています。

命を身近に感じてもらえるキッカケになるかなと思いまして。

MacBookDeerについても、将来的には販売可能な状態にしていきたいと考えています!


キタじい

ふむふむ。シカが獲れた時のストーリーも一緒に販売しているんじゃのう。

確かにこれは命や生産的な暮らしに関して考えるキッカケになりそうじゃ。他人に伝えるというのは教育を志していたから出てくる視点なのかもしれんの。


矢野さん

そうですね。

新卒で教師の道には進みませんでしたが、NPO経営もジビエアートもメディア運営も僕の中では「教育」という1つのキーワードで繋がっているんです。

若者を受け入れるNPOも経営

キタじい

矢野くんが今の暮らしを始めるようになったキッカケや今の暮らしに対する想いに関しては聞けたんじゃが、具体的にはどんな生活をしているのか教えてくれるかの。


矢野さん

そうですね。罠の見回り・水源の管理・草刈りなどの山仕事をやっているか、打ち合わせ・パソコン作業などをやっているかどっちかですね。

3日に1回は山に入ってますし、それ以外の時間はほとんどパソコンに向かっています。



キタじい

仕事づくしじゃの!?プライベートな時間はないんか?


矢野さん

プライベートな時間ってそんなに無いかもしれないですね。

NPOの活動で若者の受け入れもしているので、自分の家に他人といることも多いんですよ。


キタじい

おお。そうじゃ。冒頭で話していた悩める若者の支援活動じゃな。


矢野さん

そうですね。NPO法人ひとまきという法人で、「何度でも生き方を選ぼう!」というスローガンのもと、僕の自宅である「だいちハウス」を含む4つの拠点で若者の受け入れを行なっています。


キタじい

ほう!受け入れて何をしてるんじゃ??


矢野さん

自己理解のワークやこちらにいる人との交流などを通して自分自身でキャリアを選ぶ手助けをしています。

約2年間の活動でのべ2500人を受け入れました。


キタじい

なんと!のべ2500人も!どんな若者が来るんじゃ?


矢野さんが代表を務めるNPOのプログラムの様子

矢野さん

生き方に悩んでいる若者が多いですね。

ブラックな労働環境で苦しんでいるサラリーマンや、一斉に就活をすることに疑問を持っている大学生など20〜30代くらいの人がメインです。


キタじい

そうすると、狩猟・WEBメディアの運営・滞在者受け入れと休む暇もないのぅ。ずっと働き続けて疲れんのか?


矢野さん

もちろん疲れることもありますので一人の時間を作って休むこともありますよ笑

でも、僕は仕事と暮らしを分ける感覚があまり分からなくて。教師の道に進むのを辞めた時に、サラリーマンにならなかったのも仕事とプライベートがキッチリ分かれている生き方に疑問を感じたからというのもあったんです。


キタじい

なるほどのう。確かに仕事とプライベートがキッチリ分けるサラリーマン的な生き方はここ数十年の間に大衆化した価値観じゃの。


矢野さん

そうですね。僕が気仙沼で被災地ボランティアをしていた時も暮らしと仕事の境がない人って沢山いて。

そういう人たちといわゆるサラリーマンを比較した時に仕事とプライベートがキッチリ分けるに疑問を持ちました。

矢野さんが考える仕事の定義

キタじい

それでも、そんなに仕事ばっかりすることはないじゃろう。


矢野さん

そうですね笑  

でも、僕の中での仕事って一般的にいう仕事の定義とは少し違うのかなとも思っていまして。


キタじい

どういうことじゃ?


ジブリ映画に出てきそうな矢野さんのキッチン

矢野さん

例えば先ほどお話ししたパソコンでの作業。これはクライアントさんと直接やり取りをして、僕が何らかの成果を納品することでお金という報酬を得ます。なので仕事ですよね。

でも、例えば家の前の草を刈る。お金がもらえるわけではありませんが、僕にとってはこれも仕事なんです。


キタじい

なるほどのう。つまりは対価を得るものだけが仕事じゃないというわけじゃな。


矢野さん

そうです。都市部で働くサラリーマンの仕事とプライベートが分かれているのは大規模な分業をしているからです。

でも、それって生産的な暮らしからは遠くなりますよね?


キタじい

分業しているということは、自身が生産できるものは少ないと。


矢野さん

まさにそう。なので自分自身でできることはなるべくやりたいんです。


キタじい

それで常に動き回っているというわけじゃな。


矢野さん

そういうことです笑

この仕事とプライベートの境目の無い僕の生活の中に滞在者の方に入ってもらう。これも僕の中で「教育」なんですよね。教壇に立って何かを教えることだけが教育じゃない。生活の中で何かを感じてもらうのも教育だと思うんです。

教育と生産的な暮らしをテーマに今後も活動

キタじい

矢野くんはこれからどういった暮らしをしてきたいのか教えてくれるかの?


矢野さん

「教育」「生産的な暮らし」というキーワードに沿った活動は継続していきたいなと思います。

これは狩猟に限らずリソースや縁があれば他の分野にも挑戦してみたいですね。


キタじい

それは高知の嶺北地方でずっと続けていくつもりなのかのう?


矢野さん

嶺北でずっとというのはまだわかりません。

僕は京都の宮津という田舎の出身なのですが、いずれは地元でも活動したいという思いはありますね。でも、嶺北やこのだいちハウスも大好きなんですよ。


キタじい

そうすると多拠点の暮らしになるんかのう。


矢野さん

そうなるかもしれませんね。

それは将来の家庭との兼ね合いもあると思いますので今はなんとも言えませんね。


キタじい

どちらにせよ、「教育」「生産的な暮らし」というのは矢野くんの将来の暮らしの核になりそうじゃの。


矢野さん

そうですね!

かつての僕がそうだったように、今の日本には働き方・暮らし方・生き方に悩む若者がたくさんいます。そんな若者の気づきやキッカケになるようなことを、ジビエアートやWEBメディアや若者の受け入れを通して活動していきたいですね!


キタじい

なるほどのう。今日はいい話が聞けたよ。日本にも骨のある若者がおるのう。応援するよ。


矢野さん

ありがとうございます!キタじいも長生きして日本の若者の行く末を見届けてください!


キタじい

ほっほっほっ。まだまだ死ねんのう。

終わりに:自分の暮らしを選ぶということ


今回、矢野さんに話を聞かせていただいて「暮らしを選ぶ」ということについて考えさせられました。

多くの人は「企業選び」はするけど、「暮らし選び」はしないのではないでしょうか?

「どんな仕事をするのか?」だけでなく、「どこに住むのか?」「どんな時間配分で生活するのか?」といった事を全部ひっくるめての暮らしだと思います。

最近ではリモートで働ける方法も出てきていますので、暮らしを選びやすい時代になってきました。

生まれた土地から出られなかったり、仕事を選べなかったような時代からするとラッキーな時代に生まれた。そう思いませんか?

世間の常識自分の思い込みで、自身の暮らし選びに制限をかけてしまっていてはもったいないですよ!

ぜひ色々な人の暮らしに触れて、あなたも理想の暮らしを実現していってください。

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