
地方の終活!? 地方を「看取る」ことが日本を「守る」
2020.3.4
2020.3.4
その名の通り、消滅する可能性があると推測される都市のことで、実際に平成22年からの5年間に全国で174の集落が消滅したんじゃ。
日本でそんなに消滅してる集落があるんスかーー!!
出典:総務省 人口推計
日本は世界でトップレベルに少子高齢化が進行しており、人口も現象の一途を辿っています。
平成31年1月1日 時点での人口は前年同月と比べて 27万5千人 (0.22%)の減少となっており、特に15歳未満の人口の減少が著しい状況。
総人口 | 1億2631万7千人 | 前年同月比27万5千人減少(0.22%減少) |
15歳未満 | 1537万6千人 | 前年同月比18万1千人減少(1.16%減少) |
15~64歳人口 | 7531万7千人 | 前年同月比49万人減少(0.65%減少) |
65歳以上 | 3562万4千人 | 前年同月比39万6千人増加(1.12%増加) |
出典:総務省統計局 人口統計
出典:「 消滅時 を 据 「地域消滅時代」を見据えた今後の国土交通戦略のあり方について
続いて今後の日本の人口についてですが、今後も減少していくと予想されており、2053年に1億人を割ると言われています。
特に高齢者の増加ペースは著しく、2036年には国民の3人に1人が65歳以上、2065年には国民の約2.6人に1人が65歳以上となる社会が到来するとの推測がさてている状況です。
日本全体で人口が減っているのに加えて、東京を中心とした都市圏に人口が集中するという自体も発生しています。
2000年以降は、第3人口移動期と呼ばれ、第1人口移動機(オイルショック時)、第2人口移動機(バブル崩壊時)に続いて地方から人が流出している状態。
その影響をうけ、なんと、2019年に人口が増えたのは7都県のみとなっているのです。(東京都、沖縄県、埼玉県、神奈川県、愛知県、千葉県、福岡県)
また、国際比較をしてみても、日本は特に人口が首都に集中しているということが分かります。
他の国では、全人口に対して首都が占める割合がほとんど変化していませんね。
東京大学公共政策大学院客員教授の増田寛也氏は2014年のレポートで、若年女性が急減する市町村は消滅する可能性があり、その数は日本の市町村の約半数にあたる896にものぼるという見解を発表しました。
こちらのレポートでは、2010年から2040年にかけて、20~39歳の若年女性人口が5割以下に減少する市区町村を「消滅可能性都市」と定義しています。
そして、なんと秋田県は大潟村を除いたすべての自治体が「消滅可能性都市」となっているのです。
原因をして挙げているのは「20~39歳若年女性人 の減少 歳若年女性人口の減少」と「地方から都市圏への若者の移動」の2つです。
増田氏はレポートの中で「国民が基本認識を共有し、適切な対策を打てれば、人口の急減を回避し、将来安定的な人口規模を得ることができる。」としています。
実際に都心部から地方への移住者を増やす目的で創設された「地域おこし協力隊」は2009年の創設時は89人だったのに対して、2018年には5359人まで増え、地方への人の流れを作る後押しになっています。
また、地方暮らしやIJUターンを希望する人の支援をしている「ふるさと回帰支援センター」への来訪者・問い合わせの件数も年々増加している状況です。
出典:「地方への新しいひとの流れをつくる」現状と課題について
しかし、このような地方へ人の流れを作る取り組みがありながらも、足元では実際に消滅する集落が出てきているのです。
総務省は「平成22年からの5年間に全国で174の集落が消滅した(無居住化した)」と発表しています。(出典:条件不利地域における集落の現況把握調査について)
出典:“地域活性化”を軽々しく語るな!消え行く集落の最期を偲ぶ、「ふるさとの看取り方」
奈良県にある、大塔村中原集落は、一番多い時で100人ほどの住人が居たそうですが、現在では福西さんという老夫婦が住んでいるだけで、他は全て空き家になっています。
僕は続けて聞きました。「集落なくなるんって、どんな気持ちなんですか?」。福西さんはこう答えました。「そらぁ寂しゅうて仕方ないわ。でも若いもんはここには住めへん。俺らも精一杯やってきたけど、もうどうしようもないしなぁ」
この夫婦が中原集落の最後の住人ということですね。
集落の消滅はこのように進行していきます。
終活とは、人生の終わりに向けて葬儀・お墓・遺言・財産相続などをあらかじめ準備をしておくこと。
これを地方に置き換えたのが「地方の終活」で、「むらおさめ」と呼ばれることもあります。
地方の終活という考え方自体は、新しく言われ始めたばかりなので、あまり一般的な考え方ではないと言えるでしょう。
そして、地方創世の掛け声のもと、様々な取り組みがなされている中で「終わらせ方を模索する」という考え方に対して違和感を感じる人もいるかもしれません。
しかし、実際問題、大塔村中原集落の事例のように消滅の危機に瀕している集落もあるのです。
国土交通省の調べによると、市町村が「当面存続する」と予測した集落は 66,001集落(87.2%)で、市町村が「無居住化する可能性がある」と予測した集落 3,614 集落(4.8%)となっています。(出典:条件不利地域における集落の現況把握調査)
地方の終活に関しては、語られるようになってから日が浅いので、全国的な規模での取り組みやノウハウの蓄積は、ほとんどありません。
そんな状況の中でいち早く「地方の終活」に取り組んでいるのがムラツムギという団体です。
ムラツムギでは、「ふるさとにある大切なモノはなんですか?」「3年後にあなたのふるさとから人がいなくなると知った時、あなたは何をしたいですか?」といったテーマでのディスカッションを実施。
仮に、数年以内に住人が0人になりそうな集落があったとして、住民だけで「どのように地域を終わらせていくか?」といった議論をするのは難しいのではないでしょうか?
そのような場面で、ムラツムギのような団体が、「地域の終活を考えるために間に入る」といったことに対するニーズはあると思います。
ここで、タノクラ編集部が考える「地方の終活」についても紹介しましょう。
考えるべき観点は3つあるのではないでしょうか。
それぞれ、詳しく紹介します。
まず、1つ目は現在住んでいる人や、過去に住んでいた人の心理的な観点での終活。
「自分たちの故郷が消滅してしまう」という事実に対して心理的なケアをしていくという考え方です。
尾坂の方は、「私たちはムラを出るにあたって土地はどうする、仕事はどうする、寺はどうするということを話あっていっぱい準備をしてきたんだ。だから後悔はない。どちらかというと新たな旅立ちをしているんだ。」ということを言われました。
こちらの例のように、故郷がなくなってしまうことに対して準備をした状態でを受け入れられるケースもあります。
2つ目として、記録的な観点での終活が挙げられます。
集落の成り立ち・祭り・風習・民話などの歴史や文化に関して、何らかの形で保存をしていく必要があるでしょう。
特に、「地域の人しか進め方を知らない祭り」や、「地域の高齢者だけが口伝している民話」など住人がいなくなると同時に無くなってしまうものを映像・文章・音声などで保存していくことも地域の終活と言えます。
3つ目として、建物など物的な観点でも終活を進めていく必要があります。
建物や生活に使っていた設備がそのまま放置されると、所有者不明のまま機会損失になったり、自然環境への悪影響・景観や治安の悪化といった自体も招きかねません。
最近、日本国内で少しづつ方言が薄れていたり、無くなってきているそうです。
交通手段も情報網も発達し、日本全国の文化が均質化してきているのかも知れません。
しかし、もともと日本の各地方が持っていた文化・伝統を忘れずに保全していかないと、その集合体である日本そのものの文化・伝統も薄まっていくのではないでしょうか?
そういった観点でも、「地方の終活」は重要な役割を持っていると言えるでしょう。
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